たまたま同じ大阪の会社でしたが、先ごろバスの運転手が業務前のアルコールチェックで0.11mgという数値を出して、会社側が厳しい処分を下したというニュースが話題になりました。蒸しパンが原因という事で、ネットでも反応が凄かったです。
え?蒸しパンで!?
というのが大方の反応で、ツイッターなどを見ていると、一般の方と職業ドライバーの方では受け取り方が大分違うなという印象を受けました。感覚の違いはさておき、 蒸しパンでアルコールが出てしまっては、日常で車を運転するのは不安だろうな・・・ということで、アルコール検知器などについて知っている範囲でお話できたらと思います。
0.11㎎ってどのくらい?
この数値は呼気1リットルに含まれるアルコール濃度を表す数値です。
これがどのくらいの数値かと言うと…
ビール(350ml)一本分が0.15㎎です。
0.15㎎というのは罰則を受ける事になる数値ですが、それ以下でも運転をしてはいけません。ただし、酔っぱらっている状態と判断されれば、0.15mg以下であっても罰則を受ける可能性があります。
ビール一本と同等の数値が蒸しパンで?となると思うのですが、私も疑問に感じたので少し検証をしてみました。
検証の内容をお伝えする前に、検知器について説明を挟みたいと思います。
二種類のアルコール検知器の測定方式
アルコール検知器(アルコールチェッカー)と聞くと、多くの人は機器に向かって”ぷ~”と息を吐く映像を思い浮かべるのではないでしょうか?
- 半導体ガス式
- 電気化学式
呼気で検知するアルコール検知器にはこの二種類の方式があります。電気化学式の方が半導体ガス式よりも精度が高いですが、その分価格も高いです。
【半導体ガス式】 人体はアルコールを接種すると酸素量が減少して、電気の抵抗値が低くなる。その性質を利用してアルコール濃度を測定。
【電気化学式】 呼気に含まれるアルコールで電気を発生させ、アルコール濃度を測定。
警察が飲酒検問で使っているのはどっち?という疑問が湧いてきたので、調べてみましたが解りませんでした。ただ、弊社の据え置きタイプは警察でも使用しているといった事を聞いた事があり、それは両方式が使えるタイプです。値段も相応にします。携帯型も精度の高い物を使っているのではと思います。
検証に使用した弊社の携帯型は半導体ガス式になります。
半導体ガス式アルコール検知器で測定実験
弊社は携帯型アルコール検知器としてアルキラーという製品をドライバーに貸与しています。遠隔地でもアルコールチェックは必ず行います。
今回はコンビニで手に入る以下の5品目を食してから測定してみました。
【牛カルビ弁当】
私の晩御飯として購入したため、当初は検証対象ではなかったのですが、”0.10”ほどの数値が出てビックリしました。実は口内にご飯とお肉が入った状態で測定しています。半導体ガス式はアルコール以外を検知する事があるので、ついでに試した結果ですが、原材料を確認したら”酒精”というアルコール成分が入っており、これが原因だったようです。蒸しパンの話もこれが入っていたのでは?という事でした。
”酒精”は、腐敗防止のためにごく少量が食品に入っている事があるようです。極少量のため通常は問題になる事は無いみたいです。ただ、今回は口に食品が入ったままという強引な方法で測定したので数値が出たようです。現に普通にお茶を飲んで口内を綺麗にしつつ測定を繰り返しましたが一度も数値は出ませんでした。
以降の検証はお弁当を食べきった後に行っています。
【蒸しパンとRed Bull】
この二つでは数値が出る事はありませんでした。
まず、原材料は特にアルコールと思われる物は入ってませんでした。測定も牛カルビ弁当同様に口に食物を含んだままの状態も試しています。
この時点で先の牛カルビ弁当を食べ始めてから20~30分が経過していますので、先の”酒精”の影響も無さそうです。
【パウンドケーキ】
ガッツリ数字がでました。
実はこのパウンドケーキ、表に洋酒入りと印字されていて、原材料でもラム酒・ブランデーと書いてあるんですね。一口目でアルコールが入っているのは分かりました。
一回目:口に含んだ状態で測定
二回目:一口目を飲みこんだ直後に測定(お茶なし)
以降は時間経過と共に数値が減っていきましたが5・6分ほどで”0”になりました。
アルコール入りと言っても、ごく少量なので長時間運転ができなくなる事は無さそうですが、運転をする予定があれば避けた方が良いですね。
【納豆】
当初予定にはなかったのですが、発酵食品で臭いの強い納豆はどうなのか?という事で試してみましたが数値は”0”でした。パウンドケーキ完食から10分ほど経過していたのでそちらの影響も出てないようです。
半導体ガス式のアルコール検知器を使ってみて
今回、誤検知と思うようなケースは0件でした。アルキラーはJ-BAC(アルコール検知器協議会)認定の高精度の検知器なので、信用に足る結果だと思います。
アルコール以外を検知するケースについては、コーヒーを飲んで間をおかず吹くと”検知する事もある”という程度にはあります。芳香剤などの影響で数値が出やすくなることもありますので、測定の際は環境にも留意する必要があります。今回の検証では半導体ガス式だからと言って精度が低いという結果は確認できませんでしたが、検知器はアルキラー以外にも沢山の製品があるので製品による精度の違いがあること、使用によるセンサーの劣化等で精度が落ちると言う事は補足しておきます。
番外:実際にビールを飲んで測定
別の日になるのですが、二度ほどビールを飲んだ後に測定してみました。測定には簡易的なアルコールチェッカーを使用してます。検証をして実務での使用にも耐えられると判断して、予備で置いてある物です。
500mlの某泡の出るビールを飲んで測定しました。途中何度か計測しましたが、最大で0.280㎎でした。350mlで0.150㎎と言う事なので、納得の数値です。
別の日に同じビールの350mlを飲んた後に計測したところ0.175㎎という数値が出ました。二本目として別の350mlのビールを飲んだ後には0.270㎎でした。
飲み終わった後は計測する度に徐々に数値が下がっていきましたが、就寝して朝起きた時の計測では数値は検出されませんでした。
350ml缶のビール一本でアルコールが抜けるまでに2時間半くらいかかると言われていますが、体格や体調といった個人差はあるのであくまで目安です。
おわりに
如何だったでしょうか?
運送会社でドライバー職に就いていたり、運行管理者として点呼業務に携わっている方にも参考になる検証ではないかと思います。
検証の目的は、”これくらいは大丈夫”という事を示すためではありません。
この検証の結果が”これくらいならいいだろう”と言った安易な判断による飲酒運転の撲滅に繋がってくれたら嬉しいです。